景虎日記

無駄な考え、無駄なあがき、無駄な偏愛と偏見による電子書籍とWeb小説、その他もろもろの記述。

はじめての小川一水「想像力をくすぐる六冊の小説」

 どうも。俺だ。景虎だ。

 今回は、とっておきの小説を紹介していくエントリを書いていこうと思っているのだが、その前にキミに一つ質問を投げておこうと思う。

 

 キミは、想像力に自信がある方だろうか?

 

 突然この問いを投げられて、「当然自信がありますよ」と答えられる人は中々いないとは思うが、中には内心「俺には類い希なる想像力がある」と信じてやまない自信家もいたりするのではないだろうか?

 少なくとも俺は「想像力とアイディア」に関しては相当自信がある方であり、それはあからさまに根拠無き自信ではあるのだが、それだけを胸に秘めこの世界を四分の一世紀生きてきたと言っても過言ではないほど自信家なのである。

 

 しかし、そんな俺は彼の作品と始めて出会ったその時に、「コ、コイツだけは生きていてはいけない! 俺の自信が無くなってしまう!」と動物としての生存本能がバリバリに働きまくっていた。

 その上「なぜ俺がこれを先に書かせてもらえなかったのか?」と嫉妬心と畏怖の心が綯い交ぜになったとてつもなく複雑な心境にさせられた思い出があるのである。

 

 そう、今回紹介していく小川一水先生の書く作品は、そんな自信家どもの顔を木っ端みじんに打ち砕き、原子レベルで分解してしまうほど、圧倒的なまでの想像力と魅力的なSF的思考に満ちたものになっているのである。

 

 今回はそんな脳に贅沢な小川一水作品の中から比較的取っつきやすく、そして想像力を最大限にくすぐってくれる六冊をチョイスしてみた。

 だから、もし少しでも興味が沸いたなら、いつでもいいので、機会を見つけて彼の想像力に挑戦してみて頂きたいと思う。

 まず、驚かされ、勝負にならないこと間違いなしなのだが。

 それでは紹介していくとしよう。

(ちなみに2016/01/23現在、AmazonにてKindle本の20%ポイント還元セールを行っているので、もしも気になってしまったなら今買っておくのがよいだろう)

 

 

「時砂の王」

時砂の王

時砂の王

 

 「SFなのに邪馬台国?」「そして主人公が卑弥呼?」とキミは不安になったかもしれないが、実に立派なタイムトラベルSF小説なのである。

 これは本当にオススメだから読んでみて欲しい。

 なぜ卑弥呼が出てくるかというと、この物語が『時間線を遡行して人類を「過去の時代から」根絶やしにしようとする謎の生物「ET」と戦うために、主人公であるオーヴィルが、過去の時間線へと飛び、その現地の人々と供に共闘し、人類を守っていく』という壮大な物語だからである。

 本作時砂の王では、そんなオーヴィルと卑弥呼が共闘し、異形の物の怪「ET」と戦っていくという話なのだが、当然単純なバトル物とは訳が違うのである。

 

 当然、オーヴィルは卑弥呼以外の時代にも飛んで行って、その現地の人達と供に戦っていっていたという過去があるのだが……。

 あああ、もどかしい。

 これ以上この作品の面白さについて語ってしまうと非常に多くのネタバレをしてしまいそうになるので、もう黙って読んで欲しい。いいね?

 特にこの作品でずしんと響いてくるのは「守る物が無く、愛する物もいない世界を守る理由がどこにあるのだろうか?」という主人公の苦悩だろう。

 ああ、もどかしい。内容をすべてしゃべってしまいたい!

 

「風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記 」

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

 

  次に紹介するのがこの「風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記 」である。

 これはファンタジーの皮を被ったSF小説であり、SF小説の皮を被った立派なファンタジー小説である。

 父親と対立したことによって辺境の地に追いやられた騎士ルドガーが、その地にて不思議な守護精霊「レーズ」と出会ったことにより、その辺境の地「レーズスフェント」を開拓するための様々な知恵を授けられ、その地を「帝国自由都市」としようと発展させていくという物語なのである。

 「あれ、それってなんか『まおゆう』と似てないか?」と思った方もいるかもしれないが、まさにそれに近いのである。(ただしこっちの方が先)

 

まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」

まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」

 

  特に個人的に見所だと思っているのは、キリスト教徒であるルドガーの弟が少しずつ精霊「レーズ」と打ち解けていくところである。

 他にも熱いシーンが盛りだくさんなのだが、「なぜ本作がSFであるのか?」そして「想像力をかき立てられるファンタジー作品なのか」は是非その目で確認して頂きたい。

 まおゆうにハマった人であれば、間違いなく楽しめる一作と言えるだろう。

 ちなみに、他の人には「えーそれを選ぶの?」と言われそうな気がするが、俺は個人的に小川一水ワールドの作品の中で本書が一番好きな作品になっているのである。

 

 

「老ヴォールの惑星」

老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星

 

  本作は少し前のエントリでも紹介した作品だが、もう一度ばかりオススメしておこう。ちなみにこの記事で紹介していた。

www.10kgtr.net

 さて、本作は短編集なのであるが、もうどれをとっても恐ろしい想像力を元に描かれた傑作となっているのである。

 特に個人的に好きなのが、「ギャルナフカの迷宮」である。これはある犯罪を犯した主人公が「投宮刑に刑期はない」と言われ、死刑よりは軽く、懲役よりは重い刑罰「投宮刑」を受けるところから物語がスタートするのである。

 渡されたのは、たった一枚の紙切れだけ。

 その後、ロープと箱で作られた簡易なエレベーターで、発光する昆虫がうじゃうじゃと存在する、数キロ四方に広がる迷宮へと落とされてしまうのである。

 その紙が表す物は一体何なのか?

 そして刑期はないとは一体どのような意味なのか?

 どうだ? 気になるだろう?

 

 そして、次に素晴らしいのがなんといっても「漂った男」である。これは地球と同じくらいの大きさのゼリー状の海しか無い惑星に不時着した主人公が、どこにでも繋がるが現在位置は特定できないという無線機を使って、様々な人と交信しながら漂流するという物語である。

 ちなみにこの惑星の海水はゼリー状で食べることが出来、つまり、飢えて死ぬことはありえず、また気候も温暖で、決して凍死したりすることも無い惑星なのではあるが、ただひたすらに海しかないため、不時着した主人公の現在位置を特定することは、砂漠の中におちた一本の針を探すようなものなのである。

 つまり、死にはしないけれど、助かることも出来ないという事なのである。

 そんな中で様々な人と無線機で話を交わしていくというスタイルで、この物語は進んでいくのだが、おっと……これから先は是非本書で確認してみて頂きたい。

 

 

「フリーランチの時代」

フリーランチの時代

フリーランチの時代

 

  これも老ヴォールの惑星に続き短編集である。表題作も個人的に好きではあるのだが、最も好きな作品は「Live me ME.」というタイトルの短編になる。

 これは大きな事故によって脳死に近い状態になってしまった主人公が、医療科学技術によって意識を保ち、仮想の中で操れるデバイスを与えられるというストーリーである。

 最初は小さな点から始まり、徐々に操れる物を大きくしていき、最終的には、義肢もとい義人体を与えられ、昏睡状態に陥っている自分を介護していく事になるのだ。

 もうこれはある意味、単なるSF小説では無く、近い将来に起こりうる問題を提起した作品として、非常に意義があるものだと思う。

 実際に小川一水が予測したとおりの事が幾つか実現しているという事を思うと、薄ら寒さすら感じる一作となっているのである。

 他にも「Slowwife in Starship」という短編も面白い宇宙を漂う開拓者ニートというこれまでになかったSF作品だと思うのだが、実際のその内容は是非、読んで楽しんでみて頂きたい。

 

「第六大陸」

第六大陸1

第六大陸1

 

 さて、今までの物が純粋なSFやファンタジー作品であった一方で、この第六大陸という作品はリアルさのあるSFという物を徹底的なまでに追求した作品だといえるだろう。

 本作は「御鳥羽総合建設」という極限環境下でのい建築事業を得意としている建設会社が、あるレジャー企業から予算一千五百万円、工期十年で、月にレジャー施設を作って欲しいと依頼されるというものである。

 リアリティのある設定とその想像力もさることながら、その無茶な計画を推し進めるお嬢様とそれに振り回される人々といったキャラクター小説としての魅力も十二分につまっていたりする。

 シリーズものなので取っつきにくいかも知れないが、是非死ぬまでに読んで頂きたい一冊だと言えるだろう。

 

「天冥の標」

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

 

  おそらく本作がもっとも小川一水の中で壮大な作品だと言うことが出来るだろう。特に第一巻のこのメニー・メニー・シープでは、配電制限が行われている植民星を舞台に、謎の疫病が蔓延していくというパンデミックスリラーを描いているのだが、第三巻では、肉体改造により真空に適応した「酸素いらず」の国と前作で出てきた海賊達との死闘を描くスペースオペラ作品になっている。四巻では――という風に世界の繋がりはあるけれども、物語としては全く別のものになっており、まるで「天冥の標サーガ」とも言うべき超大作になっているのである。

 それは指輪物語において非常に詳細にファンタジー世界について描いたのと同じように、本作天冥の標では「その銀河世界」について壮大なスケールで描いている作品になっているのである。

 これを一口にこういう話であると語るのは非常に難しいことなのだが、これだけ全く違う話を進めながらも、世界というものの繋がりを色濃く描き出せるのは本当に希有な才能だと思ってやまない。

 もしも、短編集や第六大陸などを読んでみて、小川一水ワールドにどっぷりとハマり始めたらこの作品も読んでみるべきだろう。きっとその膨大な想像力に圧倒されること間違いなしである。

 

 

 

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 さて、今回は既に読んでいる人も多いとは思うが、「小川一水」の作品の中から読みやすく、想像力をかき立てられる六冊の本を紹介してみた。

 キミがもしもまだ、小川一水の作品を読んでいないのだとしたら、俺は本当に羨ましくて仕方がない。

 なぜなら、彼の作品は「記憶を消してもう一度読みたくなる」くらい非常に素晴らしく、そして異常なほどのアイディアに満ちた作品になっているのである。

 だからこそ「これだけベタ褒めしたのだから、面白くなかったらわかってるだろうな?」とキミにすごまれたとしても堂々とたっていられるし、正直、今現在持ち合わせのお金は無いのだが、「面白くなかったら返金してやろうじゃないか」と逆にすごんでもいいくらいの出来なのである。

 これまではSFというジャンルの小説を食わず嫌いしてきた方も、もしかしたらいるのかもしれないが、これを読んでいるキミには少なくとも一冊だけでも、この小川一水の作品に触れて、その快感を味わい、彼の熱狂的ファンになってしまって欲しいと切に願っている。

 少なくとも俺はそんな熱狂的なファンの一人なのである。

 さぁ、贅沢な想像の世界へとようこそ。

 彼の作品はいつでもキミが訪れることを待っている事だろう。

 では、失敬。

 

 

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

 
時砂の王

時砂の王

 
老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星

 
フリーランチの時代

フリーランチの時代

 
第六大陸1

第六大陸1

 
風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記

 

www.amazon.co.jp

 (ちなみに今やっているKindle本のポイント還元セールの中では、「人工知能は人間を超えるか」「思考の整理学」「掟上今日子の退職願」「ヲタクに恋は難しい」「図解 ブッダの教え 歴史がおもしろいシリーズ」「必ず結果がでるブログ運営テクニック100 プロ・ブロガーが教える"俺メディア"の極意」などもオススメだ。特に最後の本はつい先日も紹介したが、ブロガーをやっている人にはオススメしたい一冊になっている。)

 

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)

 

 (いわゆるディープラーニングの今と未来について描いた新書である。正直俺は表紙のサミィーちゃんを見て買ったのだが、非常に勉強になる一冊であった。その内人間が仕事の世界にいらなくなる日もくるのかもしれないな!)

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)

 

 (全国大学生協連合会調べで最も東大生が支持した本がこれらしい。外山滋比古というと国語の教科書などでも良く取り上げられる作者だが、それだけあって実に為になる本になっている。アイディアや発想したものの整理を普遍的に説いた一冊なので、クリエイターは持っておくべき一冊だろう。)

掟上今日子の退職願

掟上今日子の退職願

 

 (言わずと知れた掟上今日子シリーズの最新作である。買おうね。)

ヲタクに恋は難しい (1)

ヲタクに恋は難しい (1)

 

 (好みは分かれると思うが、俺はドキドキしながら読めた一冊である。まぁ、当然マンガなのだが、ヲタクの恋愛を描いた物語としてではなく、少女漫画として俺は楽しんでいたのである。)

図解 ブッダの教え 歴史がおもしろいシリーズ

図解 ブッダの教え 歴史がおもしろいシリーズ

 

 (自分は仏教徒なのだが、特にこれは原始仏教について比較的わかりやすくまとめられている本だと思っている。一人仏教を始める方にはオススメしたい。)

必ず結果がでるブログ運営テクニック100 プロ・ブロガーが教える

必ず結果がでるブログ運営テクニック100 プロ・ブロガーが教える"俺メディア"の極意

 

(これは本当に為になる。ブログをガチで運営されていない方も色々と参考に出来るところは多いはずである。)

 

 以上、蛇足である。

 

 追記:(まおゆうと並べている事に怒っていらっしゃる方がいるようだが、あくまでも「はじめての小川一水」なので、読みやすい本なんだよ感を演出するために並べたのである。異論はおおむね認めるが、多めに見てやって頂きたい)