映画「屍者の帝国」の楽しみ方をキミだけに教えてあげよう!
どうも。俺だ。景虎だ。
一個前のエントリでもの凄く恥ずかしい記事を書いてしまって若干後悔しているものの、今度こそしっかりとした映画レビューもとい「屍者の帝国」の楽しみ方と関連書籍について、書こう、書こうと思うわけである。
なんだか、言葉にところどころ頼りなさを感じるもののやっていくこととしよう。
ちなみに伊藤計劃に関してはきんどうさんの所でも記事を書かせて頂いているからそちらもよければ見て頂きたい。
さて、それでは始めよう。覚悟は良いかねキミ。
まず、映画版を楽しむ為にはこれだけは守って欲しいという所がいくつかある。
伊藤計劃の大ファンにとっては、どうしようも出来ない事かもしれないけれど、いいかね? 楽しむためには以下のことを守って欲しい。約束だぞ。
- 伊藤計劃が書いた部分がまるっと省略されているけれども怒らない。
- 円城塔が書いたものとも若干というかかなり違っている部分もあるが怒らない。
- 劇場が明るくなるまで絶対に席は立たない。
以上だ。これさえ守っておけば、映画に関しては楽しめるだろう。
いや、確約は出来ないが、俺は少なくとも十二分に楽しめたぞ!
原作は読んでいった方がいいの?
正直な話原作は読んでいかなくても良いと思ったが、内容を深い意味で楽しむためには、原作「屍者の帝国」を踏まえた上で、以下の作品を読んでおくのがオススメだ。
特に個人的にはフランケンシュタインは絶対に読んでおくべきだと思っている。電子書籍版なら無料で読めるから、是非読んで頂きたい。昔の作品のくせに、古くささを感じさせない名作になっている。
それでは、関連書籍の紹介を始めていこう。
未来のイヴ
ヴェリエ・ド・リラダンの未来のイヴを読んでおけば、火炎放射器片手に颯爽登場するハダリーちゃんのあれこれが実によく分かると思う。トーマスエジソンとか出てきて、「なんで? 何でエジソン?」と思った人もこれを読めば理由がはっきりするはず。まぁ、エジソンじゃ無くてエディソンなんだけどね。
それ以前に、フランス非モテ文学界の歴史に残る傑作なので、四の五の言わずに読め。いいね?
フランケンシュタイン
最低限これは読んでいこう。これを読んでいると読んでいないとでは楽しめる度がやっぱり変わってくると思える。フランケンシュタイン・コンプレックス、ロボット三原則についてもさらっと予習しておいた方がいいだろう。
あと、作家の悪夢についても読んでおくと、作品を楽しむ上での助けになるかと思われる。あと、アシモフさんのロボット三原則と、フランケンシュタインって繋がってたのかなぁと。
ああ、あと逆にフランケンシュタインの方にはまってしまったのならば、
フランケンシュタイン野望 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-12)
- 作者: ディーン・クーンツ,奥村章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/02/18
- メディア: 文庫
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これと、
フランケンシュタイン支配 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-13)
- 作者: ディーン・クーンツ,奥村章子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/06/05
- メディア: 文庫
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その続編と、
完結編を読んでみよう。これも実に良い作品だ。フランケンシュタインをモチーフにしたifSFなのだが、刑事物でもあり、ハードボイルドものでもあり、もうクーンツ節が楽しめる究極の娯楽作品に仕上がっているのだ。読みたまえ。興奮間違いなしだ!
約束だからな! いいね! キミ約束だからな!
逆に、フランケンシュタイン・コンプレックス方面に魅力を感じたのであれば、
- 作者: カレル・チャペック,Karel Capek,千野栄一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/03/14
- メディア: 文庫
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チャペックのロボットの方を読んでおこう。多分このモチーフは実際にその状況が現実で普遍的に再現されるようになるまで、延々と使われ続けるんだろうなぁ……。
ディファレンス・エンジン
- 作者: ウィリアムギブスン,ブルーススターリング,William Gibson,Bruce Sterling,黒丸尚
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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- 作者: ウィリアムギブスン,ブルーススターリング,William Gibson,Bruce Sterling,黒丸尚
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/09
- メディア: 文庫
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次はディファレンスエンジンだ。
これはある種、円城塔と伊藤計劃双方に影響を与えた作品だと言えるだろう。本作ではそんな作品中に出てくる、英国の数学者チャールズ・バベッジが最も始めに作り出したと言われている階差機関からイメージを持ってきている。
フライデーたんに疑似霊素をインストールする際に、使うパンチカードもおそらくその影響かと思われる。そして、これは完全に想像に過ぎないが、あの後頭部から差し入れるあの機械は……マトリックスがモチーフなのかな? 俺の考え違いか?
まぁ、どちらかというと攻殻機動隊もといSF作品にはありがちなビジュアルなのかもしれないが、その繋がりが気になるところである。
カラマーゾフの兄弟
カラマーゾフの兄弟も理解を深めるためには読んでおいた方がいいのだろうが、恥ずかしいことに俺はドストエフスキー先生の作品は「罪と罰」しか読んだことがないのである……。読書家なのに情けない……。俺自身、その事を恥じている。
関係する書籍だよとは聞いていたのだが……うむ。今度読んでみよう。
007シリーズ/シャーロックホームズシリーズ
緋色の研究 【新訳版】 シャーロック・ホームズ・シリーズ (創元推理文庫)
- 作者: アーサー・コナン・ドイル
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/09/11
- メディア: Kindle版
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最初「M」 という登場人物が出てきたときに「マイクロフト」のMなのか、「モリアーティ」の「M」なのか悩んでいたが、もしかすると007シリーズに出てくるMという可能性も捨てがたい。
それか、ワトソンを出しているところから見て、「M」という存在が、各所で暗躍する記号であると言いたげな感じもする。
いやはや、噛めば噛むほど味が出る。これだから屍者の帝国は面白い。
ロビンソン・クルーソー
フライデー君のもとねたはこのダニエルデフォーの小説「ロビンソン・クルーソー」における登場人物の一人で、無人島にたどり着いたロビンソンを助けてくれた、原住民に彼自身が付けた名前に由来するものだと思われる。
これは、確かジョーカーゲームでも同じようなモチーフが使われていたことと、作者のダニエル・デフォーがスパイの元締めをしていた事もあってか、もしも伊藤計劃が原作を書ききっていたとしたら、もう少し違う扱われ方をされていたようにも感じる。
ちなみにジョーカーゲームでの取り扱われ方が気になる人は、コミックの方でさくっと確認してみるのもいいぞよ。これ、小説版も漫画版も実によく出来ていて、俺のお気に入りなんだよね。
さて、もう皆さんは劇場版の「屍者の帝国」は見ただろうか? そして、書籍版の方も読んだだろうか? 個人的に書籍版は人を選ぶ作品になっているとは思うが、映画版に関しては、伊藤計劃の持ち味である「独特な世界観とテーマ性がありながらしっかりとエンタメしている」というポイントを押さえていたような気がして、個人的には書籍版よりも好きな作品になっていた。
もしも、まだ劇場に足を運んでいない、もしくは屍者の帝国や伊藤計劃について知らないという人がいれば、この機会にその魅力にどっぷりと漬かって欲しいと思っている。
是非、関連書籍なども読んで、その世界の広さを楽しんで頂きたいものである。
キミの読書に幸あれ。
では、失敬。
(きんどう氏の所で書いた寄稿記事も是非参考にして頂きたい。特に伊藤計劃をまだ読んでいないキミはある程度参考になると思うぞ!)